哲学者でもフランス文学者でもない私がフランスについて考えをまとめるとすれば、体験を通じて、ということになる。それは
- もうひとつのヨーロッパとしてのフランス、イギリスでもドイツでもなく、また、儒教的規範の対極にある国、それに加えて非アメリカという面も否定できない
- ビジネスマンであった私にとって、それは脱産業社会の手懸りを与えてくれる場であり、現在の私にとっては新しい共同体について考える場としてのフランスになるだろうか
- こうした手探りは、どうしても私を人間について考える場へと連れていく。そこでは具体的な芸術作品を伴った主張が思考を助けてくれるような気が私にはしている。
辻井 喬(つじい たかし)
1927年東京生まれ。1955年に詩集『不確かな朝』を刊行、以来数多くの作品を発表。2006年に第62回恩賜賞・日本芸術院賞を受賞。日本芸術院会員、日本ペンクラブ理事、日本文藝家協会副理事長、日本中国文化交流協会会長。
主な詩集に『異邦人』(室生犀星詩人賞受賞)、『群青、わが黙示』(高見順賞受賞)、『鷲がいて』(現代詩花椿賞、読売文学賞詩歌俳句賞受賞)、『自伝詩のためのエスキース』(現代詩人賞受賞)、小説に『いつもと同じ春』(平林たい子文学賞受賞)、『虹の岬』(谷崎潤一郎賞受賞)、『沈める城』(親鸞賞受賞)、『風の生涯』(芸術選奨文部科学大臣賞受賞)、『父の肖像』(野間文芸賞受賞)などがある。 近著に詩集『辻井喬全詩集』(思潮社)、小説『茜色の空』(文藝春秋)など。 また、本名の堤清二にて、フランス政府よりレジオン・ドヌール シュヴァリエ章と同オフィシエ章を受章。