二人共に、それぞれの詩の選び方、生かし方、作曲語法は全くと云ってよいほど違うのですが、世紀末から世紀初めにかけて、新しい音楽の創造者としてその後の芸術家たちに大きな影響を与えることになります。
今回のレクチャー・コンサートでは、限られた時間の中で、私自身が実際に演奏して来るなかで感じたこと、発見したこと、得た知識やエピソードなどのお話をまじえながら、椎名亮輔さんのピアノで歌い綴りたいと思います。
果てしなく遠い眼差しのドビュッシーと、はにかんでピルエットするサティが、そのとき、私達の間に「ボンジュール!」と現れてくるようなそんな時間になれば……と願っています。
奈良ゆみ
プログラム
クロード・ドビュッシー Claude Debussy
・抒情的な散文(クロード・ドビュッシー)より
Proses Lyriques (Claude Debussy)
夢…
De rêve…
・忘れられし小唄(ポール・ヴェルレーヌ)より
Ariettes oubliées (Paul Verlaine)
I やるせなく夢見る思い C’est l’extase langoureuse
II 私の心に涙がふる Il pleure dans mon cœur
III 霧つつむ河の面の木々の影 L’ombre des arbres
・家のない子のクリスマス(クロード・ドビュッシー)
Noël des enfants qui n’ont plus de maisons (Claude Debussy)
・ビリチスの唄 (ピエール・ルイス)
Chanson de Bilitis (Pierre Louÿs)
パンの笛
La Flûte de Pan
髪
La Chevelure
ナイアードの墓
Le Tombeau des Naïades
・シャルル・ボードレールの五篇の詩より
Cinq Poèmes de Baudelaire
黙想
Recueillement
恋人達の死
La Mort des amants
エリック・サティ Erik Satie
・1916年の3つの歌曲
Trois Mélodies de 1916
ブロンズの彫像(レオン=ポール・ファルグ)
La Statue de Bronze (Léon-Paul Fargue)
ダフェネオ (M.ゴッド)
Daphénéo (M. God)
帽子屋(ルネ・シャリュ)
Le Chapelier (René Chalupt)
・3つの恋愛詩(エリック・サティ)
Trois Poèmes d’Amour (Erik Satie)
僕は砂つぶにすぎない
Ne suis que grain de sable
僕は生まれながらの禿頭
Suis chauve de naissance
お前の装いは人目につかない
Ta parure est secrète
・4つのささやかな歌曲より
Quatre petites mélodies
エレジー(アルフォンス・ドゥ・ラマルティ−ヌ) クロード・ドビュッシーに捧ぐ
Elégie(Alphonse de Lamartine) À la mémoire de Claude Debussy
・言葉のない3つの歌曲
Trois Mélodies sans paroles
ランブイエ
Rambouillet
鳥たち
Les oiseaux
マリエンバード
Marienbad
・エレジー(コンタミーヌ・ドゥ・ラトゥール)
Elégie (J.P. Contamine de Latour)
・やさしく(ヴァンサン・イスパ)
Tendrement (Vincent Hyspa)
・いいともショショット(D・デュラント)
Allons-y Chochotte (D. Durante)
・エリゼ宮の晩餐会(ヴァンサン・イスパ)
Un Dîner à l’Elysée ( Vincent Hyspa)
・エンパイヤ劇場の歌姫(ドミニック・ボノ/ヌマ・ブレス)
La diva de l’Empire ( Dominique Bonaud / Numa Blès)
(曲目変更の可能性がありますので、予めご了承ください)
奈良 ゆみ(ソプラノ)
相愛大学声楽科卒業後、フランス政府給費留学生としてパリ国立高等音楽院に入学、メシアンに注目される。以後、パリを拠点としてヨーロッパ各地で盛んな演奏活動を展開。色彩感にあふれた声と創造的な表現力は、とりわけ現代音楽の分野で注目を集め、多くの現代作曲家が彼女に曲を捧げている。パリ・バスティーユ・オペラ座で演奏されたメシアンの『ハラウィ』をはじめとして、シェーンベルク『月に憑かれたピエロ』やラヴェル『シェヘラザード』などが高い評価を受ける。さらに、西鶴『好色一代女』のテキストを使ったジャン・クロード・エロワの作品『リベラシオン』や、松平頼則のモノオペラ『源氏物語』の歌い手として、日本の音楽・文化が西洋の現代音楽と結びつく可能性を明示した。
日本では、ドビュッシー『ペレアスとメリザンド』(ジャン・フルネ指揮、東京都響)、プーランク『人間の声』(寺嶋陸也ピアノ、ワッセルマン演出)を歌う。2002年京都市芸術センターの委嘱で『Solo Voice』を初演。2008年1月にはパリで開催されたメシアン誕生100年記念のオープニングコンサートで『ミのための詩』(ロジェ・ムラロ、ピアノ)を歌った。2001年より「フランス歌曲全貌シリーズ」を中心にクリエイティヴなテーマで、年2回のコンサートが大阪モーツアルトサロンで催されている。CD録音も数多く、ヨーロッパでリリースされた『ドビュッシー歌曲集』(クロード・ラヴォワ、ピアノ)は、仏音楽誌(ル・モンド・ドゥ・ラ・ミュジック)で最高推薦盤に、また『フォーレ歌曲集』(クロード・ラヴォワ、ピアノ)、『歌、大陽のように…』(モニック・ブーヴェ、ピアノ)、『デオダ・ド・セヴラック歌曲集』(椎名亮輔、ピアノ)は音楽之友社『レコード芸術』にて特選盤に選ばれる。
椎名 亮輔(ピアノ)
東京大学大学院博士課程満期退学。ニース大学哲学科博士課程修了。東京大学助手、パリ第3大学講師、リール第3大学講師をへて、現在は同志社女子大学教授。著書『デオダ・ド・セヴラック — 南仏の風、郷愁の音画』(アルテス・パブリッシング)で第21回吉田秀和賞受賞。その他の著書に『音楽的時間の変容』(現代思潮新社)、『狂気の西洋音楽史』(岩波書店)などがある。 主要訳書に、マイケル・ナイマン『実験音楽』(水声社)、ドメル=ディエニー『演奏家のための和声分析と演奏解釈』(シンフォニア)、ジャクリーヌ・コー『リュック・フェラーリとほとんど何もない』(現代思潮新社)などがある。