北河大次郎 (文化庁文化財調査官)

会場

日仏会館ホール

パリ中に張り巡らされたメトロのネットワーク。生活者にとって使いやすく、旅行者にもわかりやすい。"Métro, boulot, dodo"の言葉にもあるように、パリでの生活には欠かせない存在である。

ネットワークの機能だけではない。デザインも、パリの個性を彩る重要な要素となっている。街路空間を飾るギマール作の出入口、ほのかな光を反射する白タイルの内部空間、セーヌ川を跨ぐ独特なデザインの橋など、ロンドン、ニューヨーク、東京のメトロが与える工業的なイメージからはほど遠い、独創的で人間味のあるデザインが、パリのメトロを特徴づけている。

ただ、このメトロが実現する道のりは、決して平坦なものではなかった。19世紀パリ大改造の熱狂の時代にあって、政治家、技術者、芸術家たちの様々な確執によってその実現が妨げられ、約半世紀に及ぶ長年の議論の末に、ようやく完成にこぎつけた、というのが実情だからである。

 

 

講演では、パリの鉄道駅舎や都市改造などの話題も織り交ぜながら メトロ誕生に至る歴史を紐解いていきたい。

 

 

北河大次郎

東京大学土木工学科卒業後、エコール・ナショナル・デ・ポンゼショセに留学し、パリと東京のメトロをテーマにした論文でD.E.A.および博士号を取得。帰国後は、文化庁で主に近代の建造物の調査及び指定に携わる。これまで、パリ大学客員講師やICCROM文化財保存修復研究国際センター(ローマ)のプロジェクト・マネージャーなどを務め、現在は文化庁の文化財調査官。19世紀パリ大改造に関する論文により土木学会論文奨励賞、『近代都市パリの誕生:鉄道、メトロ時代の熱狂』(河出書房新社)によりサントリー学芸賞及び交通図書賞を受賞。