ジャン=ピエール・ル・ゴフ (CNRS)

会場

日仏会館ホール

長きにわたり、フランスのイメージは教会のある村での田舎暮らしと結び付けられてきた。第二次世界大戦以降の、ある村落共同体の変化を追った調査は、そのようなイメージと現実との矛盾を明らかにしている。大量失業と個人主義を背景に、都市化や新しいライフスタイル、マネージメントや余暇、大規模な観光、エコロジーなどの発展が認められる。以前の閉じた共同体に代わり、個人と様々なネットワークが将来的な見通しを分かち合うことなく共存する、雑多で開かれた共同体が出現したのだ。変化とグローバル化が進む現在、理想化された過去に対する愛着も失われてはいないが、それは明るい未来像を描けないが故である。社会的亀裂は、仕事や家族、教育、国家への愛着心などに関わる文化的亀裂と一体をなしている。そこで問われるのは個人および共同体の生活に関する様々な概念である。「村の終焉」はフランスが直面する不安のミクロコスモスであり鏡である。

 

 

ジャン=ピエール・ル・ゴフ (Jean-Pierre Le Goff)

1949年生まれ。哲学を修め、現在はフランス国立科学研究センター(CNRS)所属の社会学者。現代化とマネージメント、五月革命と新しい社会運動、民主主義社会における思想と慣習の変化など、フランス社会の変動をテーマに多くの論文や著書を発表している。主著にMai 68, l’héritage impossible ; La démocratie post-totalitaire(邦訳「ポスト全体主義時代の民主主義」、青灯社、2011年)、La France morcelée ; La gauche à l’épreuve ; La fin du village, une histoire française.がある。また、日本での出版物に「ヨーロッパ社会民主主義論集VI フランス左翼—敗北から再生へ 」(ジャン=ピエール・ル・ゴフほか著、生活経済政策研究所、2003、生活研ブックスNo.18)がある。

http://www.seikatsuken.or.jp/publish/books/book018.html