水村美苗 (作家)

会場

日仏会館ホール

加藤周一さんを個人的に知ったということ――それは、人生の多くのことがそうであるように、偶然によるものですが、私にとって大いなる恵みでした。ご一緒していて、あれほど楽しい方には、お目にかかったことがありません。講演では、その個人的に知っていた加藤周一さんについて、時代を追ってお話しします。それはニューヘィヴン、パリ、ニューヨーク、東京、中国各地、信濃追分など、ご一緒した場所を追ってお話しすることにもなります。まとまりのない断片的な話となりますが、作品を通じて見る加藤さんとは少し別の人物が浮かび上がることと思います。

 


水村美苗(みずむら みなえ)

東京都生まれ。父親の仕事で12歳の時に渡米、イェール大学でフランス文学を専攻し、博士課程修了。大学時代に、1974年から2年間客員講師だった加藤周一に出会う。作品には、未完に終わった漱石の『明暗』の続きを書いた『續明暗』を初めとし、『私小説 from left to right』、『本格小説』、『日本語が亡びるとき −−英語の世紀の中で』、『母の遺産―新聞小説』などがある。平凡社の『加藤周一セレクション2』(1999年)に解説エッセー「作家を知るということ」を寄せ、加藤周一は信濃追分での交遊録『高原好日』(2004年)で、この「独創的小説家」の作品をとりあげ、「美苗さん」との会話を無上の愉しみとしている。