フランスでは現在、あらゆる映像媒体において日本映画の普及率が高まり、出版においても日本映画史、批評、対談集などの刊行が盛んに見受けられます。著者のなかには、日本に長期滞在し、日本語を解する映画ジャーナリスト、評論家や映画関係の特派員が少なくありません。新時代が到来したのです。
このようにグローバル社会の中で活躍する彼らの視線からは、かつての評論家のあいだに見受けられた「日本」という文化相対主義とエキゾチズムは姿を消し、その国がおのずと保有する歴史・社会環境というものを、ある程度は意識しながらも、日本映画を「日本映画」という自分らの観念の枠に置き止めることをやめ、より純粋に映画としての批評を目指しています。
それでは、日本映画に対する彼らの批評姿勢とは具体的にはどのようなものなのでしょうか。また、作品の受容においては日本人の評論家たちと異なる視点をもつのでしょうか。これらについて多くの例をもとに論じます。取り上げる時代は、国際的に日本映画復活の象徴と言われている1997年の『花火』(北野武監督作品)から、興行的にフランスで大成功をおさめた2013年『そして父になる』(是枝裕和監督作品)まで。
ファブリス アルデュイニ(Fabrice Arduini): フランス国立東洋言語文化研究所卒業。パリ日本文化会館映画主任。配給会社WILD SIDE FILMの DVD COLLECTION « LES TRÉSORS DU CINÉMA JAPONAIS » ディレクター。