上野千鶴子(社会学者、東京大学名誉教授

定員

120

参加費

日仏会館会員: 無料、一般: 1.000円、 学生: 500円

主催

(公財)日仏会館

共催

朝日新聞社

加藤周一(1919/9/19-2008/12/5)は、生前コンサートに出かけたとき、ホール一杯の聴衆を見てふと、いざというとき何人が抵抗してくれるだろうか思うことがある、と述懐しています。加藤さんが最晩年の2004年につくった「九条の会」の9人の呼びかけ人もひとり、またひとりと亡くなり、私たちが引き継がないと、戦後民主主義の火は消えかけています[1]

日仏会館が2010年9月に始めた加藤周一記念講演会は今年で6回目、この7月に開いたシンポジウム「日本の戦後70年を問う: 戦後思想の光と影」[2]の延長で、社会学者でジェンダー論の上野千鶴子さんを講師にお招きし、「戦後70年と加藤周一」について、自由に語っていただきます。

上野さんは『戦後思想の名著50冊』(平凡社、2006)の編者のひとりで、そのなかにはご自身の『家父長制と資本制』(1990)も入っていますが、全共闘世代のバイブルだった吉本隆明の『共同幻想論』(1968)と現代思想ブームの仕掛け人・山口昌男の『文化と両義性』(1975)の解説をみずから担当しています。私が感心するのは、それ以外にも、上記『名著50冊』に入っている江藤淳『成熟と喪失』(1967)や西川長夫『国境の越え方』(1992)の文庫版にそれぞれ犀利な解説を寄せており、わが『羊の歌』(1968)の著者についても平凡社の加藤周一ライブラリー5「現代日本の文化と社会」にこれまた的確な解説を書いている、その快刀乱麻の筆の冴えです。

なんだ上野千鶴子は男ばかり相手にしているじゃないか、と思われないように補足しますと、彼女はまた加藤夫人だった矢島翠さんの『ヴェネツィア暮らし』(1987)の鋭い観察力と作家としての文章にオーマージュを捧げていますから[3]、講演では何が飛び出すかわかりません。

「シングル・ライフ」の海老坂武さんで始まった加藤周一講演会は今年、「おひとりさまの老後」に入りますますお元気な上野千鶴子さんをお迎えします。乞うご期待。

(司会・三浦信孝)



この案内文を書いた翌日、「九条の会」の呼びかけ人のひとり鶴見俊輔さんの死去を7月24日付朝日の朝刊で知りました。上野千鶴子さんが朝日に寄せた追悼文を添付します。

[1] 7月24日付朝日新聞朝刊より

 

[3] 「ちづこのブログNo.15」http://wan.or.jp/ueno/?p=842

ほかに上野さんは女性史研究では先輩の、故西川長夫の伴侶・西川裕子さんの『森の家の巫女・高群逸枝』(1982)に心からの敬意を表し、韓国の日本文学研究者で『和解のために』(2006)や『帝国の慰安婦』(2014)の著者・朴裕河さんの頼もしい擁護者でもあります。