去る11月13日、パリとパリ近郊で金曜の夜を楽しむ市民たちを無差別に襲った同時多発テロは、テロ組織「イスラム国」IS 系ジハーディストの犯行とされ、15日オランド大統領は両院合同会議で「フランスは戦争状態にある」と宣言、前夜からフランスは報復措置としてシリア領内のISの拠点に対する空爆を強化しました。2001年のニューヨーク「9・11」後のブッシュのアメリカと同じく、フランスはイスラム過激派組織の殲滅をめざす「テロとの戦争」に入ったのでしょうか。戦争とは国家と国家のあいだの戦争であり、国境を越えた目に見えないテロ組織に対して戦争を宣言することは、フランス政府が国家として認めないためDaesh(ダエーシュ)と呼ぶISを国家として認める矛盾をおかすことにはならないでしょうか。同時テロの犯人はパリとブリュッセルの郊外に生まれたイスラム系移民二世のグループであり、テロリストを育てた温床はイラクやシリアではなく国内にあり、「ジハード」の名を借りた無差別テロは、移民統合の失敗と差別からくる移民二世たちの絶望と憎しみのニヒルな表現という面も無視できないように思われます。
雑誌『世界』や『中央公論』は12月に出た1月号でさっそく特集を組んでいますし、白水社の雑誌「ふらんす」特別編集による『パリ同時テロ事件を考える』も12月25日に書店に並びます。日仏会館では1月7日のシャルリ・エブド襲撃と連続テロ事件から1周年にあたる新年の1月12日(火)に、ヨーロッパで現地取材にあたったジャーナリストの参加を得て緊急討論会を開きます。
なお、日仏会館ではフランス事務所の主催で、1月15日(金)18時30分から601号室で政治哲学者ブレーズ・バコフェンの講演「戦争をするとき何が行われるのか? ルソーの政治思想における戦争論」があり、また1月30日(土)16時から1階ホールで社会学者ミシェル・ヴィヴィオルカの講演「シャルリ・エブド襲撃から1年後のフランスとヨーロッパの難民危機」(討論者・鵜飼哲)が開かれます。いすれも11 月のパリ同時テロを踏まえた内容の講演になるはずなので、あわせてご案内いたします。