ダリウス・ミヨー(1892-1974)というと、とても軽快で耳あたりのよい音楽と、南仏生れの大らかなひとがらを思い起こします。ただ、フランスのユダヤ人としての深い信仰とブラジルやアメリカをはじめとした海外での多くの経験を積んだミヨーの音楽はそれだけではありません。今回は、彼の400以上を数える作品のなかからいくつか選んでご紹介し、19世紀末から20世紀初頭のいわば現代音楽の黎明期に、どのようにして個性的な作曲家ミヨーが作られたか、またその音楽人生を顧みたいと考えました。
ミニ・コンサートには、あまり取り上げられない「ヴィオラ・ソナタ」第2番を、いまもっとも輝いているヴィオラ奏者川本嘉子さん(ピアノ・野平一郎)に演奏していただきます。
演奏曲目
ダリウス・ミヨー「ヴィオラ・ソナタ」第2番 Op.244
演奏:ヴィオラ・川本嘉子、ピアノ・野平一郎
プロフィール
野平 多美(のだいら たみ)(作曲家、 音楽評論家)
パリ国立高等音楽院において作曲理論各科(和声、フーガ、対位法、管弦楽法)を卒業。1990年に帰国。2002年まで国立音楽大学、東京学芸大学などで後進の指導にあたる。現在、お茶の水女子大学非常勤講師。パリ国立高等音楽院の卒業試験審査(2004)、またエピナール国際ピアノコンクール審査員(フランス/2009)にも招かれている。
近作は、東京・春・音楽祭主催 絵本と音楽の会「はろるどまほうのくにへ」(C.ジョンソン作/絵本)の作・編曲など。ソプラノ・サクソフォーンと弦楽アンサンブルのための「亡き王女のためのパヴァーヌ」(ラヴェル・野平多美編曲)収録CD(BIS1357)が2007年春に、編曲作品が収録された「林美智子が歌う武満徹Songs」が2008年にリリース。
音楽評論家としては、「音楽の友」「ムジカノーヴァ」各誌で作曲家及び演奏家論、演奏会批評を、「レコード芸術」誌(以上音楽之友社刊)ではCDレビューを執筆中。
1999〜2001年トッパンホール企画アドヴァイザー。2005年よりアフィニス文化財団AES専門委員。「軽井沢八月祭」(2007〜10)では、『鍵盤による音楽史』、『Hommage à Takemitsu〜武満徹のVoice』などの演奏会シリーズの企画構成を担当し、好評を得た。
主要著書は「魔法のバゲット〜マエストロ ジャン・フルネの素顔」(全音楽譜出版社)、「フォーレ声楽作品集」(共著/同)、「200CDアヴェ・マリア」(共著/学研)、「200CDベートーヴェン」(共著/学研)などがある。
川本 嘉子(かわもとよしこ)ヴィオラ
ソリスト・室内楽奏者として最も活躍しているヴィオラ奏者。水戸室内管弦楽団、アルティ弦楽四重奏団、AOI・レジデンス・クヮルテット、前橋汀子カルテットのメンバー。3歳よりスズキ・メソードでヴァイオリンを始め、桐朋学園附属子供のための音楽教室で鈴木愛子、桐朋学園で江藤俊哉、室内楽を末吉保雄、数住岸子、原田幸一郎の各氏に師事。在学中より演奏活動を開始。1991年東京都交響楽団への入団をきっかけにヴィオラに転向。1999年より2002年退団まで首席奏者を務める。タングルウッド、マールボロ、ダボス、東京の夏、霧島、サイトウキネンオーケストラ、別府アルゲリッチなどの音楽祭に参加。アルゲリッチやバシュメットなどと共演し絶賛を博している。チョン・ミョンフンとも室内楽で日本・韓国公演を行った。ソリストとして、これまでにガリー・ベルティーニ、ジャン・フルネ、ペーター・マークなどの世界的な指揮者と共演。2013~2014年、東京音楽大学指揮科聴講生として指揮を勉強し、広上淳一に師事。指導者としては東京芸術大学弦楽科、室内楽科の非常勤講師、東京音楽大学指揮科特別アドヴァイザー、小澤征爾音楽塾、小澤国際室内楽アカデミーの講師などを歴任。2015年9月、第45回東燃ゼネラル音楽賞洋楽部門奨励賞を受賞。
野平 一郎(のだいらいちろう)(作曲・ピアノ)
東京芸藝術大学、同大学院を修了後、パリ国立高等音楽院に学ぶ。ピアニストとしては内外の主要オーケストラにソリストとして出演する一方、多くの内外の名手たちと共演し、室内楽奏者としても活躍。古典から現代までレパートリーは幅広い。近年は指揮者としても高い評価を得る。これまでに発表した作品は80曲以上に及ぶ。第13回中島健蔵音楽賞、芸術選奨文部大臣新人賞、第11回京都音楽賞実践部門賞、第35回サントリー音楽賞、第55回芸術選奨文部科学大臣賞、第44回、第61回尾高賞を受賞。2012年には紫綬褒章を受章。現在、静岡音楽館AOI芸術監督。東京藝術大学作曲科教授。