講師: ヴェロニク・シャンペイ=デプラ(パリ西大学)、ポーリーヌ・シェリエ (エクス=マルセイユ大学)、後藤春彦(早稲田大 学)、メラニー・ウルス (トゥールーズ大学)、稲葉奈々子(上智大学)、石埼学(龍谷大学)、ミシェル・ココレフ(パリ第8大学)、イザベル・小沼(フランス国立東洋言語文化大 学)、エルヴェ・ル・ブラ (EHESS)、ヴィルジニー・ミリヨ(パリ西大学)、レミ・スコッチマロ(トゥールーズ大学)、田口太郎(徳島大 学)、ミシェル・ヴィヴィオルカ(EHESS)
司会: ジャン=ミシェル・ビュテル(日仏会館・日本研究センター)、三浦信孝(中央大学名誉教授)、山元一(慶応義塾大学)
フランスと日本における、社会の「中心」に対する「周縁」の問題に関心が集まり、本シンポジウムの開催となった。「社会的周縁」とは、周辺に追いやられている人々や、発言を無視されている人々、また、もっとも共有されている規範の定義のなかでは認識されないか、間違って認識されている人々のことである。
本シンポジウムを貫く理念は以下の通りである。既成の原理に対し、社会的周縁は問題やリスクであるどころか、社会を活性化し、進化のための活力となる。
しかしながら、社会的周縁が社会を活性化する役割を担うためには、われわれの社会がそれらを可視化するための、法的、制度的、知的ツールをもたねばならない。
大切なのはそれらのツールによって認識されることなのである。フランスと日本は、長いあいだ異なる国家の歴史やイデオロギーによってパラレルな経験をしてきた。日仏の比較分析は、われわれの社会の成功や欠陥をあきらかにし、これからの社会変革に有益な議論をもたらすだろう。
シンポジウム初日は社会的周縁を認識する制度的なプロセスについて考える。パネル1では、人口統計学や地理学などがいかに制度的なプロセスを育むかについて、その限界と危険性も指摘しつつ考察する。パネル2では、法の前進によって制度的プロセスがいかに実現されるかについて、時としてとられる想定外の手続きについても検討しつつ考察する。シンポジウム2日目は、周縁が認識を勝ち取るための闘いの中でいかなる行動を起こしてきたかに焦点を当てる。パネル3では、周縁を管理しようとする制度との対決が、いかに無理解や逸脱、譲歩に満ちた長い闘いとなるかを明らかにする。最終的に、すでに割り振られたアイデンティティを受け入れることで周縁は認識されるが、そこで生ずる問題をパネル4では検討する。
これらの問題を考えるため、フランスや日本から、人口統計学や、地理学、都市計画、法学、社会学、民俗学などの様々な分野の専門家を集めようと考えた。具体的な事例の紹介のあとにはディスカッションが設けられる。ディスカッションによって、周縁がいかに社会的変革を推進するかが明らかになるだろう。ラウンドテーブルでは、全登壇者がこのテーマについて会場の聴講者と議論を交わすようにしたい。また、このシンポジウムを記念し、6月30日には、日本でフェミニズムを試みたフェミニストたちについてのドキュメンタリーが上映される。
プログラム
10h15 開会の辞
ジャン=ミシェル・ビュテル(日仏会館・日本研究センター)
10h30 基調講演 : 社会科学における周縁的存在とは何か
ミシェル・ヴィヴィオルカ (フランス国立社会科学高等研究所)
ディスカッサント : 三浦信孝(中央大学名誉教授、日仏会館)
司会 : ジャン=ミシェル・ビュテル
12h 昼食
1.周縁的存在を可視化する: 認識への制度的なプロセス
13h30 パネル 1 : 周辺的空間を同定する:方法、カテゴリーと課題
司会 : ポーリーヌ・シェリエ (エクス=マルセイユ大学)
周縁と周辺:連帯、ソシアビリテとその衰退
エルヴェ・ル・ブラ (フランス国立社会科学高等研究所)
日本列島の周縁から大都会の周縁へ:周辺部のダイナミックス
レミ・スコシッチマロ(トゥールーズ大学)
<周縁>の理解と計画的介入
後藤春彦(早稲田大学)
15h30 休憩
15h45 パネル 2 : 周縁的存在を認識する:その法的な手段
司会 : 山元一(慶應義塾大学)
日本における司法と周縁―認識の試みと規範化の場--
イザベル・小沼(フランス国立東洋言語文化大学)
フランス法における周縁の指定、測定、統合: 社会的政治国家と普遍性の間
ヴェロニク・シャンペイ=デプラ(パリ西大学)
法秩序と社会的周縁―ハンセン病者隔離政策を例として
石埼学(龍谷大学)
17h45 終了