中嶋洋平(東洋大学) 立花 史(早稲田大学) 赤羽 悠(東京大学大学院 EHESS博士課程) 司会 伊達聖伸(上智大学)

会場

501会議室

定員

40

主催

(公財)日仏会館

博士論文を完成したあるいは準備中の若手研究者による、分野横断型の相互啓発セミナー。司会進行は伊達聖伸(上智大学)。

今回の人文社会系セミナーは、中嶋洋平、立花史赤羽悠の各氏をお招きし、それぞれの専門性を踏まえた研究成果や現在の関心のありかを、専門外の聴衆にもよくわかる語り口で話していただきます。

哲学・思想・歴史を横断しながら自由に討議する開かれた相互啓発の会にしたいと思います。ふるってご参加ください。それぞれの論者は発表が45分、討論15分を予定しています。

 

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14h00  開会 三浦信孝・廣田功

14h10 中嶋洋平(東洋大学非常勤講師)

「サン=シモン思想におけるヨーロッパ主義の位置づけ」

15h10 休憩

15h20 立花史(早稲田大学非常勤講師)

「マラルメ――「夢想家たちの結社」とパブリック・ドメインの詩学」

16h20 休憩

16h30 赤羽悠(東京大学大学院総合文化研究科/フランス社会科学高等研究院博士課程)

「社会主義の再考――マルセル・モースの政治思想を読み解く」

17h30 閉会

 

 

中嶋洋平(なかしま ようへい)フランス国立社会科学高等研究院(EHESS)政治学博士。現在、東洋大学社会学部などで非常勤講師。専門は、ヨーロッパ統合思想の歴史的展開、とくに19世紀の思想家サン=シモンのヨーロッパ統合ヴィジョン。単著に『ヨーロッパとはどこか――統合思想から読む2000年の歴史』(吉田書店、2015年)、『サン=シモンのヨーロッパ(仮題)』(吉田書店、2016年(近刊))。翻訳にドミニク・シュナペール『市民の共同体――国民という近代的概念について』(法政大学出版局、2015年)。

サン=シモン思想におけるヨーロッパ主義の位置づけ:サン=シモンの諸思想の中で、ヨーロッパ統合の構想がいかなる位置を占めるのかについて検討する。1802年に始まり1825年に終わるサン=シモンの思想展開をめぐっては、基本的に何かしらの代表する思想が存在しないという評価が与えられてきた。空想的社会主義と呼ばれる思想でさえ、後期思想の一部分を占めるものでしかない。ヨーロッパ統合の構想については、1814年の『ヨーロッパ社会再組織論』に限定されるものとして扱われているが、前期思想から後期思想までを俯瞰した場合、ヨーロッパという問題意識が遍在していることを明らかにしたい。

 

立花史(たちばな ふひと)早稲田大学博士(文学)。現在、早稲田大学文学部などで非常勤講師。専門は、19世紀の象徴主義文学と、その文学的あるいは思想的受容。単著に、『マラルメの辞書学――『英単語』と人文学の再構築』(法政大学出版局、2015年)。論文に、«Reconsidération de la notion mallarméenne de la "Tragédie de la nature" »(Études Stéphane Mallarmé no.3, 2016年3月)ほか。共著に、『近代日本とフランス象徴主義』(水声社、2016年)ほか。共訳に、ジャック・デリダ『散種』(法政大学出版局、2012年)、『哲学への権利Ⅰ・Ⅱ』(みすず書房、2014年‐2015年)。

マラルメ――「夢想家たちの結社」とパブリック・ドメインの詩学:19世紀後半、社会の民主化に適合した教育の近代化が急ピッチで進められ、ラテン語や修辞学を原理とした従来型の古典語人文学は、フランス語や近代外国語による“科学的”な人文学へと移行しつつあった。本発表では、近代文学をめぐるマラルメの言説をこうした文脈に置き直しつつ、彼の「文学基金」構想を再考したい。若い時分から「夢想家たちの結社」を作品で語り、国際詩人協会の設立準備に奔走し、晩年には、資本主義の喧騒から一歩退いた少数派の作家集団の重要性を主張する――そんな彼が提起したアイディアの一つが、パブリック・ドメインの活用である。ここには、ボーマルシェ、バルザック、ゾラたちがコミットした著作権闘争とは異質な制度的枠組が見られ、ユゴーの夢を踏まえたマラルメなりの詩学が託されていることを明らかにしたい。

 

赤羽 悠(あかば ゆう)フランス社会科学高等研究院修士課程(政治研究)修了。現在、東京大学大学院総合文化研究科および仏社会科学高等研究院博士課程。共著に『共和国か宗教か、それとも』(白水社、2015年)。論文に「平等の時代のヒエラルキー――タルド『模倣の法則』における「デモクラシー社会」論」(『年報地域文化研究』第16号)ほか。

「社会主義の再考――マルセル・モースの政治思想を読み解く」:「贈与論」などを著した人類学者マルセル・モース(1872-1950)が政治参加の人でもあったことは、以前から比較的知られていた。だが、彼のテクストから政治思想を取り出す本格的な試みは、未発表であった草稿『国民』(2013)の刊行などを機に、近年ようやく端緒についたものである。本発表では、このモースの政治思想、とりわけ社会主義の思想を扱う。社会学・人類学の中で練り上げられた「社会的事実」の概念を踏まえつつ、モースがどのような社会主義を構想していたのか、また、社会主義がかえりみられなくなりつつあるようにも思われる現代において、その人類学的観点からの考察がいかなる意義をもつのか、といった点を、近年のフランスにおける研究動向にも触れつつ検討したい