福井憲彦(学習院大学/日仏会館)、 池内 了(名古屋大学名誉教授)、重田園江(明治大学)、 伊達聖伸(上智大学)、 渡名喜庸哲(慶應義塾大学)、高澤紀恵(国際基督教大学)

会場

日仏会館ホール

参加費

一般 1.000円、学生 500円 日仏会館会員 無料

主催

(公財)日仏会館 

2015年6月8日、日本の国立大学法人等における教員養成系ならびに人文社会系学部等の縮小再編を指示する文部科学大臣「通知」が出された。ちょうど折から、安保関連法案を巡って憲法学者たちが違憲であると指摘し、反対運動が展開していたが、それらを無視した政権が、議会与党の多数を背景に強引に法案審議を進めようとしている同時期であった。この「通知」は、国内外から強い批判的論議を呼び招いた。慌てた文科省は、人文社会系を潰す意図はないと日本学術会議等で説明して回ったというが、現実には「運営交付金」絡みで、多くの国立大学で人文社会系の縮小再編「改革」が動いている。こうした動きは、日本の全体的な高等教育政策、自然科学を含めた研究体制再編に関連しており、国立大学における動向は、補助金絡みで操作の対象とされている私立大学とも無縁ではない。20世紀末以来、日本における研究教育をめぐる環境は、改革どころか憂慮すべき劣化を深刻にしているのではないか。知性の欠片も感じられない言葉が政治の場で飛び交い、短期的な物的繁栄の追求ばかりが突出するなかで、日本の将来における知的豊かさの一層の摩耗が予測され、暗澹たる思いを禁じ得ない。

本シンポジウムは、そうした現況を批判的に踏まえ、学術交流の現場から声を発する機会の一つとして設定された。ただしここでは「大学論」を直接テーマとするのではなしに、広く学術研究と現実との関わりに焦点をすえて、基礎的な学術研究や領域間の交流、及びグローバルな交流の意義や諸課題を問題提起し、皆で考えたい。

基調講演として、日本を代表する宇宙物理学者として長年、研究教育の最前線に立ってこられ、近年の問題の多い状況に対して積極的に発言してこられた池内了氏(名古屋大学及び総合研究大学院大学名誉教授)から、人文社会科学/自然科学の枠を超えた広い視野に立って、現状への問題提起をしていただく。次いで基調講演を受けた論点の開示では、日仏間の文化・学術交流を目的とする日仏会館でのシンポジウムとして、人文社会系学問の日仏におけるあり方を踏まえて、多様な領域の第一線で活躍している4名の研究者から、それぞれが携わる学問研究の意義と貢献について具体事例に即しながら話していただく。4名の研究者とは、重田園江(明治大学)、渡名喜庸哲(慶応義塾大学)、伊達聖伸(上智大学)、高澤紀恵(国際基督教大学)の各氏である。そのあと全体で討論することを通じて(司会進行:福井憲彦 学習院大学/日仏会館)、日本の現状に一石を投じると同時に、人文社会系学問研究がこれからの日本と世界において果たしうる役割について、またクリアすべき課題について、参集くださった皆さんと考えたい。

 

 

 プログラム

13:30 開会:趣旨説明 福井憲彦(学習院大学/日仏会館)

13:40 基調講演 池内了(名古屋大学及び総合研究大学院大学名誉教授)

「岐路に立つ日本の大学と科学」

14:20 論点開示(各30分)

① 重田園江(政治社会思想史 明治大学)「市場の言語と「人文学の危機」言説」

② 渡名喜庸哲(現代思想 慶應義塾大学)「日本の人文−社会−学の危機と哲学」

③ 伊達聖伸(宗教学 上智大学)「宗教化する政治? −宗教的なものの軌跡と日仏社会の危機」

④ 高澤紀恵(歴史学 国際基督教大学)「歴史学に何ができるのか −交差する日仏近世史の現場から」

16:20〜16:40 休憩(コーヒーブレイク)

16:40〜18:00 全体討論   司会進行:福井憲彦(歴史学)

終了後〜18:45 懇親会(ホール前)