私たちは1986年にウルリッヒ・ベックが予言した「リスク社会」に住んでいる。しかし2011年「3・11」の大震災後の日本と2015年1月と11月の連続テロ後のフランスで、私たちは今いったいどこにいるのか。極端な暴力によって破壊された社会をいかにして修復するか。議会制民主主義の機能不全を打破し、いかにして社会を変えるか。これらの問題をめぐり、『意味への回帰、衰退宿命論を超えて』(2015年)のミシェル・ヴィヴィオルカと『社会を変えるには』(2012年)の小熊英二が討議する。危機的状況を診断するのみならず、いかにして社会をつくり直すかを探る。7月の日本の参院選(あるいは衆参同日選)と2017年5月のフランス大統領選を控え、時宜を得た討論が期待される。
ミシェル・ヴィヴィオルカ(69歳)はフランスを代表する社会学者、社会科学高等研究院教授・人間の科学財団理事長。邦訳に『レイシズムの変貌』(1998)、『差異』(2001)、『暴力』(2004)、近著に『社会学9講』 (2008)、『来るべき左翼のために』 (2011)、『若者に説明する反ユダヤ主義』(2014)ほか。
小熊英二(54歳)は歴史社会学者、慶應義塾大学総合政策学部教授。著書に『単一民族神話の起源』 (1996)、『〈日本人〉の境界』(1998)、『〈民主〉と〈愛国〉』(2002)、『1968』 (2009)ほか。2015年には脱原発運動を記録したドキュメンタリー映画『首相官邸の前で』を制作している。