報告者 松井裕史(金城学院大学)、中島太郎(中京大学)、平田 周(南山大学)  司会 渡名喜 庸哲(慶應義塾大学)

会場

501会議室

定員

40

言語

日本語

主催

(公財)日仏会館

フランスで博士号を取得した若手研究者による、分野横断型の相互啓発セミナーです。司会進行は渡名喜庸哲(慶應義塾大学。今回の人文社会系セミナーは、松井裕史、中島太郎、平田周の各氏をお招きし、それぞれの専門性を踏まえた研究成果や現在の関心のありかを、専門外の聴衆にもよくわかる語り口で話していただきます。文学・哲学・思想・歴史を横断しながら自由に討議する開かれた相互啓発の会にしたいと思います。ふるってご参加ください。それぞれの論者は発表が45分、討論15分を予定しています。

 

 

プログラム

13:30 開会 渡名喜庸哲

 

13:40 松井裕史 「ウエストフォリア―植民地化時代における狂気の歴史」

 

14:40 休憩

 

15:00 中島太郎 「フローベールにおける宗教と科学―「二つのフランス」の戯画」

 

16:00 休憩

 

16:20 平田 周 「アンリ・ルフェーヴルの思想とその時代」

 

17:20 閉会

 

 

 

 

松井裕史(まつい ひろし)

パリ第8大学博士(文学)。現在、金城学院大学文学部専任講師。専門は、フランスおよびフランス語圏文学、特にカリブ海。

 

「ウエストフォリア―植民地化時代における狂気の歴史」 

フーコーが『狂気の歴史』で提示する17世紀古典主義時代における狂気の排除について、同時期に成立したフランスのカリブ海植民地の視点から再検討する。狂気の排除は17世紀半ば、ヨーロッパ内部における監禁だけでなく、植民地という外部への追放という形で行われたのではないだろうか。狂気を大西洋の西にある植民地へ排除することで、西洋が理性を自認していく過程を「ウエストフォリア」(Ouest-folie)と名付けて、報告する。

 

 

 

 

中島太郎(なかじま たろう)

パリ東大学博士(文学)。現在、中京大学国際教養学部准教授。専門は、19世紀文学における宗教と歴史の表象。論文に、「『聖アントワーヌの誘惑』における知の変容―ヴォルテール主義からルナン主義へ」(『フランス語フランス文学研究』第98号)、「ジョゼフ・ド・メーストルの非妥協的カトリシズム」(Revue Flaubert, no 13)、「『ブヴァールとペキュシェ』における社会的カトリシズム」(『フランス語フランス文学研究』第109号)、「資料ノートとヴォルテールによる偽殉教者批判」(Revue Flaubert, no 15, 2017)。

 

「フローベールにおける宗教と科学―「二つのフランス」の戯画」

宗教と科学(知識)の相克は、ギュスターヴ・フローベール(1821-1880)の作品を横断するテーマである。『聖アントワーヌの誘惑』で参照された悪魔の知識は、『ブヴァールとペキュシェ』9章では司祭との神学論争に引き継がれる。近代科学と対峙し、保守反動と結託する宗教は、19世紀の非妥協的カトリシズムを映し出す。小説における教権主義と反教権主義の紋切型の応酬が、いかに「二つのフランス」の戯画をなしているかを、主に読書ノートの草稿を参照しつつ考察したい。

 

 

 

 

平田 周(ひらた しゅう)

パリ第八大学博士(哲学)。現在、南山大学外国語学部フランス学科准教授。専門は、社会思想史、とくにフランスの哲学者・社会学者の空間論。論文に、「人間主義論争再訪―アルチュセールとルフェーヴルの理論と実践における人間の位置」(『相関社会科学』第21号)、「ニコス・プーランザスとアンリ・ルフェーヴル―1970年代フランスの国家論の回顧と展望」(『社会思想史研究』第37号)、「未来からの回想が照らし出す現在―ミシェル・ウェルベック『服従』についての所感」(『現代思想』第435号)

 

「アンリ・ルフェーヴルの思想とその時代」 

1960年代から1970年代にかけて、アンリ・ルフェーヴル(19011991)が着手した都市社会学の研究は、90年代を境に英語圏で盛んに論じられるようになった。こうした研究の進展を踏まえながら、本発表では、ルフェーヴルがそうした研究を行った時代的コンテクストならびに、1976年から1978年にかけて執筆されたルフェーヴルの国家論(『国家について』)の意義について論じる。