2017年5月、エマニュエル・マクロンはフランスの歴史上まったく新しい独創的なプログラムを掲げて大統領選に勝利したが、本講演はそれ以後フランスが経験してきた政治の季節について考察する。マクロン候補は、フランスを麻痺させてきた左右の対立と距離をとり、フランス政治の「古いゲーム」から脱却しようとした。右でも左でもない政治、しかし「同時に」左右双方のイデオロギーからアイデアを汲んで、公約本で「革命」と呼んだ「中道」の政治を前面に押し出した。
講演は過去200年以上にわたりフランスで様々な形態をとった議会制度すべての起源であるフランス革命から出発する。1789年以来、政治的中道の問題は、一定の政治グループが担うイデオロギーを安定的なかたちで定礎すべく提起されてきた。この政治グループは、二世紀の歴史を通ししばしば相貌を変えて登場したが、政党間の対立を超え、大方の国民を安心させるため、左右の両極には距離をとり中道で統治すると主張してきた。
現実には、この中道は、政治的プラグマティズムを基調とし、たえず日和見主義的行動をとる風見鶏たちから構成される。この「極中道」は、民主的手続きと立法権を制限し、行政権を握って、完璧な「公共の秩序」政策により、エリートの手で国を運営しようとする強い意思をその特徴とする。
18世紀から19世紀、20世紀を経て21世紀初頭にいたるまで、過去と現在を往還することによって、フランスの若き大統領の政治がさほど独創的なものではなく、強大な行政権に魅せられ、重要な政治決定から国民の大部分を遠ざけようとする、フランスのパワーエリートの伝統的習性にもとづくことが明らかになるだろう。
ピエール・セルナ
パリI -パンテオン=ソルボンヌ大学教授、フランス革命史研究所所長。講演のテーマに関連する著書に La République des Girouettes - 1789-1815 et au delà / une anomalie politique : la France de l’extrême centre, Seyssel, Champ Vallon, 2005(『風見鶏の共和国、1795-1815とその後、極中道のフランスという政治的アノマリー』)、政治時評にL’Humanité紙に連載中のMA ChRONique de l’extrême centre(極中道マクロン政治のクロニクル)がある。
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