ソーシャル・ネットワークとは何か、そして、それは現代のビジネス実務にどのようなインパクトを与えているのか。そこには多くの誤解がある。講演では、企業等のフォーマルな指揮命令系統を持つ組織における、インフォーマルな人間関係の重要性を説明した上で、世界的なICT技術の発展により「つながる社会」に移行した現在、このような関係性が、個々の企業の枠を越え、地域コミュニティやビジネス・プロジェクトへ広がるソーシャル・イノベーションを説く。この様に社会の様々な境界があいまいになり、また、人々の働き方が大きく変わりつつある状況において、ネットでワン・クリックすれば、高品質の商品と価格情報があふれる先進国の多くの市場では、主導権は売り手としての生産者から買い手である消費者に移ったと言える。この様な時代に企業が消費者にモノやサービスを売ることは容易ではなく、そこには新たなパラダイムが必要であり、ICT技術のプラットフォームから視点を移し、文化を創り出す企業の情報発信としてのコーポレート・コミュニケーションが極めて重要な企業戦略となる。いかにして消費者にオブジェクトに関与させ、売り手と買い手の共創(co-creation)により文化的な商品の価値を作り出すかが多くの日本企業の今後の長期的な課題である。
プログラム
講演会 18時30分~20時30分(開場18時00分)
懇親・交流(19時30分~20時30分)
講師・サポーターを含む参加者全員で立食形式懇親会(ワイン等ドリンク・おつまみ付き)
中野 勉
青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授。米国コロンビア大学組織イノベーションセンター外部ファカルティ。1982年慶應義塾大学経済学部卒業。シカゴ大学大学院修士、金融機関勤務を経て、コロンビア大学大学院社会学部博士課程修了(Ph.D.in Sociology)。ミシガン大学及び関西学院大学助教を経て2007年より現職。ネットワーク分析を応用した組織とマネジメント、クラスターに関するリサーチ、プラグマティックな価値評価と市場の問題などを専門領域とし、日米欧のビジネススクールにて企業戦略論、組織論、国際経営などを日本語や英語で担当。2016年にはコペンハーゲン・ビジネススクール(デンマーク)、カシャン高等学術院社会研究所(フランス)、マックスプランク社会研究所及びゲーテ・インスティテュート(ドイツ)にて客員教授または研究員。主要著書『ソーシャル・ネットワークと組織のダイナミクス-共感のマネジメント』(有斐閣2011)、『ソーシャル・ネットワークとイノベーション戦略―組織からコミュニティのデザインへ』(有斐閣 2017)、編著『Japanese Management in Evolution: New Directions, Breaks, and Emerging Practices』(Routledge 2017) 等。
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