講師 佐藤陽介(千葉工業大学)、大嶋えり子(金城学院大学)、鵜戸 聡(鹿児島大学) 司会 伊達聖伸(東京大学)

会場

501会議室

定員

40

言語

日本語

主催

(公財)日仏会館

若手研究者を中心とする、分野横断型の相互啓発セミナーです。講師には、それぞれの専門性を踏まえた研究成果や現在の関心のありかを専門外の聴衆にもよくわかる語り口で話していただきます。ふるってご参加ください。それぞれの論者は発表が45分、討論15分を予定しています。

 

 

プログラム
14:00 開会 伊達聖伸
14:10 佐藤陽介 「エレクトラ――『悪の華』における宗教性」
15:10 休憩
15:30 大嶋えり子 「アルジェリア独立闘争と現代社会」
16:30 休憩
16:50 鵜戸聡 「世界の意味を再構築する――カメル・ダーウド『もう一つの「異邦人」』における自由」
17:50 閉会

 



佐藤陽介(さとう ようすけ)
早稲田大学博士(文学)。現在、千葉工業大学、早稲田大学文学学術院非常勤講師。専門は19世紀フランス詩、とくにボードレール『悪の華』における主体性について。論文「詩人と詩集―ボードレールにおける主体と客体」(『早稲田大学大学院文学研究科紀要・第57輯』)、共訳論文、ソフィ・ビュニク「〈斜陽〉の日本郊外に、いま、誰が住むのか?――1990年代末から2010年代にかけての、大阪都市圏南部における居住移動についての研究」(『久塚純一古希祝賀論文集』成文堂、2019年)など。

 

「エレクトラ――『悪の華』における宗教性」
エレクトラは、『悪の華・第二版』最終詩「旅」に現れる神話的形象だ。「絶望して自己自身であろうと欲すること」キルケゴールが示すこの問題は、19世紀中盤から始まる汎ヨーロッパ的なキリスト教の危機に通底しており、『悪の華』断罪後書かれた補填詩篇においても、ボードレールの絶望は深まりを見せている。彼が称揚する自己崇拝としての「ダンディスム」もまた、ここに起因するように思われる。「反抗」も空しく跡形と化した宗教は、とりわけ生と死を理由づける役割において、神話によって補われる。

 



大嶋えり子(おおしま えりこ)
博士(政治学)(早稲田大学)。現在、金城学院大学国際情報学部講師。専門はフランスによるアルジェリアの植民地支配およびフランスの移民政策。単著に『ピエ・ノワール列伝――人物で知るフランス領北アフリカ引揚者たちの歴史』(パブリブ、2018年)、論文に「移民との連帯――アルジェリア独立戦争から68年5月へ」(首都大学東京『人文学報 フランス文学』515巻15号)、「フランスにおけるアルジェリアに関わる「記憶関連法」――記憶と国民的結合を巡って」(『国際政治』184号)ほか。

 

「アルジェリア独立闘争と現代社会」
1962年にアルジェリアの解放を以て終結したアルジェリア独立戦争は地中海の両側に多大な影響をもたらし、今日においてその影響は続いている。アルジェリアは、独立を勝ち取ったアルジェリア民族解放戦線(FLN)による一党独裁政権や内戦を経験し、FLNのブーテフリカがこの20年間大統領として権威主義体制を維持している。FLNを支えているのは解放の獲得であり、ブーテフリカ政権の維持と独立戦争は強く結びついている。一方で、独立戦争時にフランス本土に約100万人のフランス人が移動し、パリや南仏の都市では雇用や住宅の問題が生じた。ピエ・ノワールと呼ばれる彼女ら・彼らは今日でもアルジェリアに対し特別な思いを持っており、それを極右の政治家などは利用し、票を集めようとしている。独立戦争による現代への政治的影響を考察する。

 



鵜戸聡(うど さとし)
東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士後期課程修了。博士(学術)。鹿児島大学法文学部准教授。フランス語圏を中心とするアラブ=ベルベル文学を専攻。F/T、SPAC等でアラブ演劇の字幕翻訳も手掛ける。論文に « Présence maghrébine au Japon: Contextes historiques de traduction et d’interprétation » (Expressions maghrébines, 15-1) 、「小さな文学にとって〈世界文学〉は必要か?」(『文学』17-5, 岩波書店)、「異言語で敗北を引き受ける:金石範からムールード・マムリへ」(『立命館言語文化研究』25-2)、共著に『国民国家と文学』(作品社)、『反響する文学』(風媒社)、『アルジェリアを知るための62章』(明石書店)等がある。

 

「世界の意味を再構築する――カメル・ダーウド『もう一つの「異邦人」』における自由」
本発表では、アルジェリアのフランス語作家カメル・ダーウドが、アルベール・カミュの『異邦人』をどのように反転させて『もう一つの「異邦人」――ムルソー再捜査』(Meursault, contre-enquête)の世界を作り上げているのかを確認しつつ、非対称性の克服による公正さの探求が自由の発見と現体制や宗教イデオロギーの批判に転じていく構造を、歴史的な転換期にあるアルジェリア社会の現状と照らし合わせながら考察したい。

 

 

 

 

 

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