【講演】ニコラ・ドゥラランド(パリ政治学院)
【司会】ベルナール・トマン(日仏会館・フランス国立日本研究所)
【討論参加】平野千果子(武蔵大学)、岸本美緒(お茶の水女子大学名誉教授)、三浦信孝(中央大学名誉教授)、成田龍一(日本女子大学)、高澤紀恵(法政大学)

会場

日仏会館ホール

言語

フランス語(同時通訳あり)

主催

日仏会館・フランス国立日本研究所

共催

(公財)日仏会館

 

トランスナショナルなグローバルヒストリーの登場は、経済、社会、文化、政治にまたがる現象を分析するスケール(尺度)を大きく変えている。グローバルヒストリーは、19世紀、20世紀に形成された国民国家の航跡をたどる歴史叙述が長いあいだ特権化してきたナショナルな分析枠の批判に裏打ちされている。政治的理由により、歴史のナラティブは、国民国家の枠からこぼれ、国境を横断し、その権力を覆すような論理に蓋をしてきた。しかしながら、国民国家の歴史をまったく無視していいわけではない。2017年に出版されたパトリック・ブシュロン監修の『世界のなかのフランス史』は120人の歴史家を結集し、フランスとフランスの領土と人口の、きわめて長期的な持続におけるトランスナショナルな歴史を提案する。そこではローカルな尺度、ナショナルな尺度、帝国の尺度が交差する。本書は、アメリカや日本、ドイツで、ナショナルな事象の歴史をグローバルなコネクティッドヒストリーの成果に照らして書き換える大きな波のなかに位置づけられる。

 

 

講師プロフィール

 

© Hermance Triay

 

ニコラ・ドゥラランドはパリ政治学院歴史研究センター教授で、19世紀、20世紀ヨーロッパにおける資本主義下での格差と連帯の歴史を専門とする。近著La Lutte et l'Entraide. L'âge des solidarités ouvrières(『闘争と協働:労働者連帯の時代』、スイユ社、2019年)では、国際労働運動の起源についてトランスナショナルな政治社会史の視点から研究した。それ以前には、納税義務に対する合意と抵抗について(Les Batailles de l'impôt. Consentement et résistances de 1789 à nos jours『租税をめぐる闘い-1789年から今日までの合意と抵抗』、スイユ社、2011年、2014年再版)や、公的債務の政治史について研究している。2017年刊のパトリック・ブシュロン監修『世界のなかのフランス史』では、フロリアン・マゼル、ヤン・ポタン、ピエール・サンガラヴェルと共に編者を務めた。人文社会科学系オンライン誌La Vie des Idéesの編集委員でもある。