画像 アルカション湾におけるカキ養殖施設
この度、新型コロナウイルス感染症拡大防止策として、シンポジウム「カキをめぐる日仏交流:歴史、産業、文化」の3月14日(土)の開催を取りやめることとなりました。参加をご予定されていた皆さまには誠に申し訳ございませんが、何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。
改めて開催する場合には、(公財)日仏会館ウェブサイトwww.mfjtokyo.or.jpにてお知らせさせていただきます
2020年3月2日(月)
今日のフランスの食卓に並ぶカキはほぼ日本原産です。2011年3月11日の大津波で被災したカキ養殖を救うためフランスから多くの援助が三陸に送られました。なぜなのでしょうか。科学講座では、カキが取り持った日仏のカキ養殖に関する交流について、フランス人研究者も招待し、歴史、産業、文化の面から振り返ります。
プログラム
1.趣旨説明
山崎 満(日仏会館/ICU)
13:10-13:50
2.日仏カキ交流史
日仏海洋学会幹事 小池康之氏(元東京海洋大学)
13:50-14:30
3.日本におけるカキ養殖とフランスの影響
日仏海洋学会会員 關 哲夫氏(公益社団法人農林水産技術情報協会)
14:30-15:10
4.持続的なカキ養殖に向けて:南三陸志津川湾を例にして
日仏海洋学会会長 小松輝久(公益社団法人日本水産資源保護協会)
15:10-15:20
休憩
15:20-16:40
5.フランスにおけるカキ養殖 仏日海洋学会副会長
カトリーヌ マリオジュールス氏(アグロパリテク 教授)
16:40-17:00
6.討論
17:00-18:00
7.懇親会
小池康之
旧東京水産大学(東京海洋大学の前身)において学部課程・修士課程を修了後、フランス政府給費研修生として1973年5月から1974年4月まで国立海洋開発研究所付属ブルターニュ海洋学センターの生物学部門に留学。引き続き1976年8月までの2年間を同センターと西部ブルターニュ大学の研究室に特別研究員として所属し、ヨーロッパ・トコブシ(俗称フランス・アワビ)の飼育に従事し、初期生活史を明らかにする。 その結果を基に北ブルターニュの岩礁海岸において地元漁協との協力で禁漁区を設置し、同アワビの大量放流を実現した。その間、地産のフランスガキの病気による大量斃死に対し、人工種苗生産試験を試みるとともに日本産のヒラガキ(イタボガキ)母貝移植などの仲介に携わる。帰国後、東京水産大学と合併後の東京海洋大学の所属臨海実験施設・小湊と館山市の両実験実習場主任を歴任する。その間、旧東京水産大学に於いて論博(水産学博士)を取得。有用貝類の種苗生産と生態調査および浅海域における新型魚礁の開発試験などに携わる。
日本水産学会・日本増殖学会・水産工学会の元会員。日仏海洋学会会員、評議員・渉外幹事として現在も活動を続け、日仏の研究交流に従事する。東日本大震災による三陸の津波被害に際し、フランスの研究仲間からの支援の仲介を会長と共に務める。 2018年10月にフランス政府国家功労勲章オフィシエ受章。科学講座では、日本とフランスで携わった養殖に関する経験をもとに、日仏のカキ交流史について概観する。
關 哲夫
一般社団法人全国水産技術者協会理事
小松輝久
京都大学において学部、修士、博士課程を修了後、農学博士を取得。京都大学農学部助手、東京大学大気海洋研究所准教授、横浜商科大学商学部教授を経て、現在、公益社団法人日本水産資源保護協会技術顧問。フランス政府給費留学生として1992年8月から1993年12月までニース大学海洋環境研究室に留学。2010年から政府間海洋学委員会西部太平洋小委員会海洋リモートセンシングプロジェクトリーダー、2012年4月から日仏海洋学会会長、2016年12月にフランス政府国家功労勲章オフィシエを受賞。研究分野は、海洋生態学、水産海洋学、特に、藻場の海洋環境、リモートセンシングによる藻場マッピングなど。
2014年度から2018年度まで環境省の環境研究総合推進費「S-13 持続可能な沿岸海域実現を目指した沿岸海域管理手法の開発」(代表柳哲雄九州大学名誉教授)、テーマ2「開放性内湾が連なる三陸沿岸海域における沿岸環境管理法の開発」のテーマリーダーをつとめ、南三陸町志津川湾をモデル海域として、持続的な養殖と健全な海洋環境を実現するための科学的研究を行った。2011年の大津波前では、過剰なカキ養殖が海洋環境を汚染していたが、現在は、適正な養殖筏数に減少させることで、持続的なカキ生産と健全な海洋環境が実現され、志津川湾戸倉地区のカキ養殖は、持続的な養殖を認証する国際的なエコラベルであるASC認証を二枚貝養殖として2016年に日本では初めて取得した。また、志津川湾の藻場はラムサール湿地として登録された。科学講座では、これらの研究で得られた最新の研究成果を紹介し、カキを手掛かりに自然と共生する社会の重要性を参加者の方々と共有したい。
カトリーヌ・マリオジュールス
パリ-グリニョン国立農学院技術士(修士)課程を修了し、同大学において農学博士を取得。1984年から1986年までの2年間、日本学術振興会のポストドクトラルフェローとして、東京水産大学、東北大学、広島県水産試験場、広島市水産試験場において日本のカキ養殖を研究。フランスに帰国後、1986年から1992年の間、Céréopaにおいて、水産養殖のコンサルタントとして勤務。1992年から2002年の間、パリ-グリニョン国立農学院動物科学科助教授(水産養殖専攻)、2002年から同学院教授、改組により生命・食料・環境科学パリ工業研究所(AgroParisTech)教授を務めて現在に至る。
研究領域は、水産養殖開発、水産養殖バリューチェーン、水産養殖製品市場、消費者認識。上述の経歴と研究分野が示すように、マリオジュールス氏は、日本およびフランスにおけるカキ養殖の実態に精通されており、さらに、トレーサビリティ、食品ブランドなどについて造詣が深い。マリオジュールス氏の講演で、日仏のカキ養殖、流通、消費の面での違いについて知ることができるだけでなく、フランスカキ文化の粋を知ることができるでしょう。