コロナウィルスの世界的蔓延は、政府、メディア、民衆の反応を通じて各国の社会、政治、文化のあり方を同時に照らし出す稀有な機会となりました。必然的に国際的な比較が盛んに行われ、日本を含む東アジア諸国が欧米諸国に比べ被害が少なく抑えられていることに注目が集まっています。しかしこの落差の理由については諸説あり、未解明のこの新型感染症に対する完璧な対策はまだどこにも存在しません。政治的判断が科学的知識に依拠できないとき、「責任」という概念も問い直されざるをえません。感染拡大のなかでの憲法の人権規定の生かし方、緊急事態と公権力の関係、医療体制の今後など、日本の民主主義も困難な問いの前に立たされています。延期されたオリンピックの問題を含め、主としてフランスとの比較を通して、危機のなかの日本の政治文化のありかたの考察を試みます。
4月24日に予定されていた憲法講演会を、テーマを変えて実施します。
鵜飼 哲(うかい・さとし)
一橋大学名誉教授、フランス文学・思想。ジャック・デリダの翻訳・研究で知られる。著書に『抵抗への招待』(1997年)、『主権のかなたで』(2008年)、『テロルはどこから到来したか』(2020年)、『まつろわぬ者たちの祭り』(2020年)等、訳書にジャック・デリダ『友愛のポリティックス』(共訳、2003年)等がある。
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