第一部:海洋学における日仏交流史
第二部:日仏海洋学会創立60周年を記念して
第一部では、海洋学における日仏の交流史を振り返ります。戦後の海洋科学における日仏交流の嚆矢は、1958年フランスの深海探査艇(バチスカーフと呼ばれる)のFNRS-3号が来日し、日本人科学者佐々木忠義東京水産大学教授がともに乗船し、潜航に成功したことです。これを契機に日仏海洋学会は1960年に創立され、活動が始まりました。1960年代中頃に、フランスにおけるカキの大量斃死に際して、日仏海洋学会会員今井丈夫東北大学教授らが三陸のカキ稚貝輸出のための検疫などについて取り組みました。その結果、日本のマガキ稚貝がフランスのカキ養殖の危機を救いました。このお返しとして、2011年3月11日の大津波の被害にあった三陸のカキ養殖業者に対して、すぐにフランスの研究者やカキ養殖業者から援助の手が差し伸べられました。1974年7月に日本政府とフランス政府は、日仏科学技術協定を締結し、その下で日仏海洋開発専門部会が発足しました。約2年ごとに部会を日仏両政府は交代で開催し、現在も日仏間の海洋科学・水産学分野の研究の促進を図ってきています。そこで、この部会の議事録をもとに、日仏間の海洋学分野の交流について振り返りたいと思います。さらに、日仏政府間では、海洋についての対話が始まり、2019年9月20日に第一回日仏海洋対話がヌメアで開催されました。仏日海洋学会会員のイブ・エノック氏らの尽力で、海洋研究開発機構とフランス海洋開発研究所間の覚え書きに基づいて、ニューカレドニア周辺の海山研究を行うことが決まりました。このほかに、日仏・仏日海洋学会は、日仏それぞれの知恵と技術を結集し、海洋の持続的な開発を実現しようという「自然と文化」プロジェクトを準備しています。第一部ではこれらのことについて振り返るとともに、将来の協力関係についても議論します。
第二部では、第一部で総括した海洋学における日仏交流に対する日仏海洋学会の貢献を振り返ることを目的としています。日仏海洋学会の60年に亘る活動に対して寄せられた、関係する学術団体からのメッセージの紹介と、日仏間の海洋学分野での協力に貢献された方々への感謝を述べたいと思います。
本来は、2020年10月にシンポジウム開催の予定でしたが、コロナ禍のもと日仏間の人の移動が制限されたことから、2021年に順延しました。このような状況で、フランス側研究者も参加できるシンポジウムを開催できる体制が日仏会館においても整ってきたため、インターネットを用いて60周年+1年ですが、本シンポジウムを開催することとなりました。
プログラム
◆第1部「海洋学における日仏交流史」
13:00~13:10 挨拶、
パトリック・プルーゼ(仏日海洋学会会長)、小松輝久(日仏海洋学会)、ベルナール・トマン(日仏会館・フランス国立日本研究所)
13:10~13:40 「FNRS3バチスカーフはなぜ日本に来たのか?海洋学分野における日仏協力のはじまり」 ユベール=ジャン・セカルディ(仏日海洋学会名誉会長)
13:40~14:10 「水産科学分野における日仏交流:フランスにおけるカキ大量斃死と三陸産カキ稚貝の輸出」 小池康之(日仏海洋学会)
14:10~14:40 「日仏海洋開発専門部会の発足とその後」 戸谷 玄 (文部科学省)
14:40~15:10 「海洋環境・研究に関する日仏対話:ニューカレドニアでの海山調査」 イヴ・エノック(仏日海洋学会副会長)
15:10~15:40 「自然と文化プロジェクト:日仏間の知識とノウハウの交換-持続可能な開発の五つの柱と五感を中心に」パトリック・プルーゼ(仏日海洋学会会長)
15:40~15:55 総合討論
司会:田中祐志(日仏海洋学会副会長)
(15:55~16:05) 休憩
◆第2部「日仏海洋学会創立60周年を記念して」
16:05~16:25 「1960年日仏海洋学会の発足と日仏海洋学発展への貢献」 小松輝久(日仏海洋学会会長)
16:25~16:45 学術団体からの祝辞紹介(代読)
16:45~16:55 仏日海洋学会からの祝辞および記念品贈呈
16:55~17:05 日仏間海洋学交流貢献者の表彰
17:05~17:15 2023年10月開催(予定)ノルマンディー Caenで開催される第19回仏日海洋学シンポジウムついての案内
ジャン=クロード・ドーヴァン(カーン・ノルマンディ大学)
17:15~17:20 閉会の辞 高柳和史(日仏海洋学会副会長)
日仏会館のイベント等活動は、個人会員・賛助会員の皆様のご支援で成り立っております。