フランス文学の研究において、個別の女性作家についての研究は数多くあるものの、女性の文学史の包括的な概説書と呼べるものは長らく存在しませんでした。英語圏では1960年代以降、女性学が学問分野として創設されフェミニズムの言説が研究・教育の対象となり、文学研究においてもそうした視点からの正典の見直しが数十年にわたっておこなわれてきたのに対し、フランス語の文学史の著作の多くは女性作家の貢献を過小評価する傾向にあったためと考えられています。しかし近年、フランス文学研究においてもフェミニズム的視点の導入と女性作家の再評価がようやく進んできています。そのことを端的に示しているのが、フランスとそれ以外のフランス語圏の文学における女性の文学史を初めて包括的に扱った画期的な研究書『女性と文学(Femmes et littérature. Une histoire culturelle)』(2020年、ガリマール社)の刊行です。
本セミナーでは、この著作の編著者であり長年フランスの女性文学を専門に研究を続けてこられたマルティーヌ・リード氏を講師として迎え、この著作の成り立ちと意義、フランスの文学研究における女性の扱いの歴史と現状について、お話いただきます。講師による講演の後には、本書第2巻の邦訳を準備中の7名の日本の研究者をディスカッサントとするラウンドテーブルを予定しています。
なお、本イベントは2025年3月8日(土)に開催予定の「[対談]桐野夏生&マルティーヌ・リード:日仏の女性たちと文学をめぐって」とともに、日仏女性研究学会国際女性デー記念連続イベント「女性と文学――過去・現在・未来」の一環として行う予定です。