日仏文化講演シリーズ第393回
ライシテは現代フランス社会を映し出す鏡であり、学際的アプローチを必要とする研究対象であると同時に、歴史的経緯を押さえてその内容を広く一般に知ってもらう意義のある事象です。芸術は歴史的に聖俗両方の権力とも結びついてきたもので、現代フランスの美術をめぐる諸制度もライシテの考え方と関係があります。本講演会では、フランス革命以後の美術作品やカリカチュアを通して、フランスにおけるライシテの展開をたどり、新たな視点からフランス近代美術史にもうひとつの光を当てることを試みます。流れとしては、まず、伊達聖伸がフランス革命から1905年の政教分離法に至るライシテの歴史を図像学的に読み解きます。次に、鈴村麻里子が、19世紀のフランス美術にライシテの展開が及ぼした影響に言及し、核となる作品の読み直しを試みます。最後に、藤原啓が、政教分離法以降の宗教美術の展開にふれながら、20世紀の社会において美術が果たした役割について考察します。
登壇者プロフィール
藤原啓
宇都宮美術館学芸員。フランス語圏を中心とした美術に関する企画等を担当。これまで担当した企画展に「マルク・シャガール展」(2014年)、「ジョルジュ・ビゴー展」(2021年)、「芸術家たちの南仏」(2023年、他館との共同企画)など。
鈴村麻里子
三重県立美術館学芸員。専門は美術館教育と西洋近代美術。近年担当した展覧会・事業に「シャルル=フランソワ・ドービニー展」(2019年、他館との共同開催)、「美術館がつなぐ共生社会推進事業」(2024年度~)など。
伊達聖伸
東京大学教授。専門は宗教学で長年ライシテの研究に携わってきた。著書に『ライシテ、道徳、宗教学』(勁草書房)、『ライシテから読む現代フランス』(岩波新書)、『もうひとつのライシテ』(岩波書店)など。