『帝国以後』(2002年)で世界的名声を博したエマニュエル・トッドは、そのデビュー作『最後の転落』(1976年)で、当時、強大を誇ったソ連の近い将来における崩壊を予言し、『帝国以後』でアメリカ帝国の崩壊を、しかも具体的直接的にはリーマン・ショックを予言したところから、フランスでは「予言者」とさえ呼ばれているが、そのような「先見性」の拠って来るところは何か。家族システムの人類学、人口統計学、歴史学、経済学、地政学などのディシプリンを自在に操る彼の「学」のありようを、その基礎から探ってみたい。
石崎晴己
青山学院大学名誉教授 (前文学部・総合文化政策学部教授)。専攻はフランス文学・思想。訳書に、サルトル関係(ボスケッティ『知識人の覇権』、サルトル『戦中日記』、レヴィ『サルトルの世紀』、コーエン=ソラル『サルトル』など)の他、カレール=ダンコース、ピエール・ブルデュー、エマニュエル・トッドの著作など、編著書に、『世界像革命』、『21世紀の知識人』など。