1921年、ポール・クローデルは駐日フランス大使に任命される。その任命に先立ち、彼が最大の野心を抱いていたのが日仏会館のプロジェクトであった。1924年12月に設立されたこの施設のDirecteurのポストを、クローデルは、コレージュ・ド・フランス教授で偉大なインド学者であるシルヴァン・レヴィに託したいと思っていたが、同じ年の3月、既に日仏会館は「法人格を有する財団(財団法人)」に指定され、その理事長は大実業家である渋沢栄一が務めていた。Directeur françaisの名称と権限をめぐる問題は、日仏間の時に緊迫した交渉を経て、ポール・クローデルとシルヴァン・レヴィが退任してからずっと後の1931年にやっと解決する。1927年初めに日本からワシントンへ旅立つ前、東京で直面した困難を知ったクローデルは、関西日仏学館の監督機関として機能させるため、今度は、フランス大使を代表とする単一運営の財団の設立に尽力した。同学館は1927年末、京都に創設された。同じ施設内に異なる国の組織が共存するという状態は、決して容易ではないが、日仏会館を特徴づける要素であり続けた。会館はこの2024年12月、創立100周年を迎える。
※講演会の後、最終日となる日仏会館ギャラリーで開催中の展覧会「日仏会館、100年の歴史」を登壇者とともに鑑賞します。
講師プロフィール
ミシェル・ワッセルマン(立命館大学名誉教授)
立命館大学(京都)名誉教授で元関西日仏学館館長(1986-94年)のミシェル・ワッセルマンは、在任中に京都フランス音楽アカデミー(1990年)とヴィラ九条山(1992年)の設立に貢献した。演出家として、2003年より京都オペラ協会の監督を務める。日本の伝統的な演劇を専門とし、クローデルの駐日時代にも関心を寄せている。『黄金と雪 - ポール・クローデルと日本』(ガリマール、2008年)は、2009年にÉmile Faguet賞(Académie Française)とLittéraire de l'Asie賞を受賞。近年では下記の著書がある。
・Paul Claudel dans les villes en flammes (Champion, 2015)
・Paul Claudel et l'Indochine (Champion, 2017)
・Les Arches d'or de Paul Claudel : L'action culturelle de l'Ambassadeur de France au Japon et sa postérité (Champion, 2020年)(『ポール・クローデルの黄金の聖櫃 —―〈詩人大使〉の文化創造とその遺産』(水声社、2022年) )
日仏交流への貢献が評価され、2018年京都市芸術振興賞を受賞。この賞における50年の歴史の中で、外国人として初めてこの栄誉を受けた。
ディスカッサントプロフィール
三浦信孝(中央大学名誉教授)
東京大学教養学科フランス科卒、中央大学名誉教授の三浦信孝は、2002年から財団法人日仏会館常務理事、副理事長を経て、2020年から顧問。編者ないし共編者として出版した日仏会館での日仏シンポジウム記録論文集は ルソーやヴァレリーから加藤周一まで15点を数える。2024年には『日仏文化』の百周年記念号を編纂した。