日仏文化講演シリーズ第391回
西欧思想界に多大な影響を与えたアウグスティヌスは、もともと北アフリカ出身のマニ教徒でした。その彼が成功した秘密は何だったのでしょうか。彼は苦学してラテン語の才を発揮し、30歳で西ローマ帝国首都のミラノ宮廷付ラテン語修辞学者に大抜擢されます。しかし何に挫折したのか、2、3年後にはすべてを放擲して帰郷し、キリスト教徒に転生した後半生の約40年を、終生イタリアに戻ることなく、港町ヒッポ(現アルジェリアのアンナバ)の司教として活動します。その彼がなぜ西欧で後世高く評価されるに至ったのか、そこで彼の蔵書が果たした意外な可能性を指摘します。
登壇者プロフィール
豊田浩志
これまで研究対象に深層心理的切り口で迫りたいと考えてきました。主著は『キリスト教の興隆とローマ帝国』(南窓社、1994年)。編著に『モノとヒトの新史料学』(勉誠出版、2016年)等。翻訳に、P・ザンデル『バチカン サン・ピエトロ大聖堂下のネクロポリス』(ぎょうせい、2011年)等。今回の講演は「人間アウグスティヌスを『告白』から探る」『歴史家の調弦』(ぎょうせい、2019年)の続編です。(講師・記)