2018年4月に急逝したイヴ=マリー・アリュー(1948-2018)は、40年にわたって中原中也、萩原朔太郎、石川啄木から大岡信、俵万智まで多くの詩人を精力的にフランス語に翻訳・紹介し、日本の近現代詩をフランス語圏の読者に知らしめることに多大な功績を残しました。日仏の詩の翻訳家が、氏の業績を振り返りながら、仏訳を通して見えてくる日本詩の魅力について語ります。最後に坂井セシル フランス国立日本研究所所長からコメントをいただく予定。
プログラム
14:00 三浦信孝, なぜイヴマリ・アリユーへのオマージュか?
14:30 宇佐美齊「 翻訳に抗するものとのしなやかな闘い」
15:00 ブリジット・アリュー「日本詩仏訳のいくつかの痕跡, 小林一 茶から金子みすずまで」
15:45 質疑応答
16:00 休憩
16:15 ドミニク・パルメ「ただひとつの声がポリフォニーになるとき――萩原朔太郎「恋を恋する人」の三つのフランス語訳」
17:00 中地義和 「訳詩の音楽的側面について」
17:30 質疑応答
17:45 坂井セシルconclusion : La place de la poésie dans la traduction de la littérature japonaise en français?
18:00 終了
イヴ=マリ・アリュー(Yves-Marie Allioux, 1948-2018)
京都大学で教鞭を執ったのち、トゥールーズ大学日本語科准教授として長く日本近代詩を教えた。文学博士。中原中也、萩原朔太郎、石川啄木、大岡信、俵万智らの作品を精力的に仏訳し、日本近現代詩のフランス語文化圏への紹介に関してパイオニア的役割を果たした。同時に、フランス詩の日本への影響の問題にも関心を寄せ、2002年に審査に付された博士論文はまさにこのテーマを扱っている――「日本におけるフランス詩、1920-1940年」 « La poésie française au Japon : 1920-1940 »(パリ第7大学)。2018年4月に急逝。
主な著書
『日本詩を読む』大槻鉄男訳、白水社、1979
主な翻訳
1993 : Poèmes de tous les jours : anthologie proposée et commentée par Ôoka Makoto, Philippe Piquier (1995 et 2017 : Piquier poche) 大岡信『折々のうた』
2005 : Poèmes / Nakahara Chûya, Philippe Piquier (2018 : Piquier poche) 2007年日仏翻訳文学賞(小西国際財団)
2008 : L’anniversaire de la salade / Machi Tawara 俵万智『サラダ記念日』1987
2016 : Une poignée de sable / Ishikawa Takuboku, Philippe Piquier 石川啄木『一握の砂』
ブリジット・アリュー(Brigitte Allioux)
翻訳家、トゥールーズ大学講師。故イヴ=マリ・アリュー氏の夫人。パリ大学で日本文学の修士号を取得後、日本政府給費留学生として大阪大学に留学。その後、出光美術館で展覧会の組織、カタログ作成等に関わる。修士論文に基づく一茶句集『おらが春』仏訳(2006)により、2009年度日仏翻訳文学賞(小西国際交流財団)を受賞した。2011—12年には雑誌『フランス』(白水社)で、「俳句を訳す――個人的経験からフィクションへ」« Traduire le haïku, de l’expérience personnelle à la fiction »と題する連載を担当した。三島由紀夫、池澤夏樹のほか、近年では南伸坊や金子みすゞの翻訳を手がけている。
主な翻訳
2006 : Ora ga haru : mon année de printemps / Kobayashi Issa, Actes Sud 2009年日仏翻訳文学賞(小西国際交流財団)
Traduction des livres de Shibô Minami : Haïkus du chat (2015), Une beauté zen : Paroles de moines (2015), Haïkus de Sôseki - A rire et à sourire (2017), Mes chats écrivent des haikus (2017)
ドミニク・パルメ(Dominique Palmé)
1949年パリ生まれ。パリ第3大学で比較文学の修士号を取得。1979年よりフリーランスの翻訳家、通訳として活動。1986年以降は主に現代日本文学を翻訳している。池澤夏樹、三島由紀夫、よしもとばなな、井上靖など翻訳作品は20作品を越える。1995年に中村真一郎『夏』の翻訳で小西国際交流財団文学翻訳賞を受賞。宇野千代『おはん』、大岡信編『現代詩の鑑賞101』(共訳)、谷川俊太郎『世間知ラズ』などを翻訳している。
主な翻訳
1993 : L’été / Nakamura Shin’ichiro 1995年日仏翻訳文学賞(小西国際交流財団)
2014 : L’ignare (sekenshirazu)/ Tanikawa Shuntarô, édition bi-lingue, Cheyene éditeur
2014 : 101 poèmes du Japon d’aujourd’hui, éd. Ôoka Makoto, Phillipe Piquier (tr. avec Yves-Marie Allioux) 大岡信編『現代詩の鑑賞101』新書館, 1998
宇佐美 斉(USAMI Hitoshi, 1942- )
京都大学名誉教授。専門はランボーなどフランス詩。中原中也ほか日本の詩や詩人も論じる。
主な著書
『落日論』筑摩書房 1989年 [和辻哲郎文賞]
『中原中也とランボー』筑摩書房 2011年
『清岡卓行の円形広場』思潮社 2016年
主な翻訳
『エリュアール詩集』小沢書店 1994年(双書・20世紀の詩人12)
『ランボー全詩集』ちくま文庫 1996年
中地義和(NAKAJI Yoshikazu, 1952- )
東京大学名誉教授、日仏会館理事。フランス近代詩(とくにランボー)が専門だが、ル・クレジオほかの翻訳も手がける。
主な著書
Combat spirituel ou immense dérision ? Essai d’analyse textuelle d’Une saison en enfer, José Corti, 1987. [1989年度渋沢・クローデル賞特別賞]
主な翻訳
『ランボー全集』平井啓之・湯浅博雄・川那部保明共訳 青土社 2006 (全1巻)
アントワーヌ・コンパニョン『書簡の時代 ロラン・バルト晩年の肖像』みすず書房 2016
J.M.G.ル・クレジオ 『心は燃える』鈴木雅生共訳. 作品社 2017
日仏会館のイベント等活動は、個人会員・賛助会員の皆様のご支援で成り立っております。