一般1,000円、学生500円, 主催団体の会員無料
定員 120名 / 要事前予約
主催:公益財団法人日仏会館
プログラム
10:00-10:10
主旨説明 篠田勝英(中世フランス文学/白百合女子大学)
第1部:聖と俗の中世(司会:篠田勝英)
10:10
池上 俊一(中世文化史/シエナ史・東京大学)
「人間社会の鏡としての動物イメージ」
中世は、人間中心主義が台頭して西洋文明が本格的に形成され始めた時代である。キリスト教もスコラ学も、動物から截然と分かたれた人間の高貴な地位 をしきりに説いた。その考え方は、異教との訣別の決意表明でもあった。しかし逆説的なことに、おなじ時代、イメージ世界の中に動物が復活・増殖して、西洋 人の感性や思考を導く鍵のひとつになった。動物イメージとその変容を辿りながら、中世社会の構造の深奥に迫ってみたい。動物イメージの中でも幻獣は特異な 位置を占めるが、これについては、一角獣を中心に話す予定。
11:00
瀬戸 直彦(フランス中世文学・早稲田大学)
「中世南仏の物語『フラメンカ』における聖と俗」
13世紀中頃の物語『フラメンカ』は,嫉妬に狂った夫が妻を塔に幽閉するというすぐれて中世的な主題から始まります。それを噂に聞いた青年騎士がいかにし て彼女に意を通じさせるか,その大胆な筋の展開(教会のミサでの言い寄り・湯治場での逢い引き)を,トルバドゥールの歌う「貴婦人」への恋愛を物語化した 作品という視点より考えてみます。」
11:50-13:30
休憩
13:30
西田 雅嗣(建築史・京都工芸繊維大学)
「クリュニー中世美術館の建築を読む——浴場と修道院長居館、古代と中世が共存する場所の記憶」
中世建築一般の中(クリュニー建築やシトー建築などの修道院建築の話)でのクリュニー中世美術館の建築の特徴と、クリュニー中世美術館の建築の一大 特徴である古代のテルマエとの共存についての話をしたいと思います。中世のクリュニー建築にとってのローマの意味とその建築的現れについての解読が中心的 話題となるでしょうか。加えて、こうした古代と中世のハイブリッドを中世美術館へと転用したという事実と古代・中世という歴史の重層性の関係ついても少し お話しできればと考えています。
第2部:クリュニー美術館(司会:木俣元一)
14:20
鈴木 伸子(15、16世紀フランドル絵画・国立新美術館研究補佐員/東京藝術大学大学院博士後期課程)
「後期中世のタピスリー」
タピスリー(綴織、タペストリー)の伝統は古く、その起源は古代にまで求められますが、ヨーロッパで一般的に制作されるようになったのは14世紀後半のことでした。繊維の表現技術の飛躍的な向上と絹産業や羊毛産業の興隆によって、タピスリーは15、16世紀に最盛期を迎えます。この発表では、タピスリーという芸術がどのような特色を持ち、どのようにして制作されたのか、さらにパリやフランドルの芸術動向といった様々な側面から、後期中世のタピスリーを概観します。
15:10-15:30
コーヒーブレイク
15:30
徳井 淑子(文化史/服飾史・お茶の水女子大学)
「≪貴婦人と一角獣≫:女性ファッションと装飾モティーフは何を語る」
〈我が唯一の望み〉と題されるタピスリーは、五感を律する第六感としての「心」の表現であるとする説がある。そうであるならテントの模様は、背景の〈恋の 悲しみ〉を表す花のモティーフとともに、文学的抒情性を含んだ涙滴のモティーフであるに違いない。一方、女性ファッションには、その独特の髪型に15世紀 イタリアに増大するシュビラ像の図像表現の影響がうかがわれる。モティーフを通して15世紀から16世紀の転換期に制作された作品の表象世界を考える。
16:20
木俣 元一(西洋中世美術史・名古屋大学)
「《貴婦人と一角獣》における恋愛のテーマを解読する」
このタピスリーについては、実に多様な解釈が示されてきていますが、五感と第六(心)の寓意であり、「我が唯一の望み」は身体的感覚を乗り越える意志の力を意味するという解釈が広まっているように思います。この発表では、むしろ全体としては恋愛のテーマが中心をなしており、五感の寓意は付随的なものであるという解釈を示したいと思います。とくに、「我が唯一の望み」の意味、「一角獣狩り」と「鷹狩り」のテーマと恋愛との関係、花冠と音楽の主題、小動物の表現などを中心に読み解いていきます。
全体総括 木俣元一
17:10-17:40
質疑応答
17:45
懇親会(ホールフォワイエにて)
共催:日仏美術学会
助成:公益財団法人石橋財団